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コンクリート落下防止対策工の試験検討業務 報告書

平成13年3月
(財)鉄道総合技術研究所
構造物技術研究部(トンネル)

概    要
   トンネルの覆工コンクリートおよび鉄筋コンクリートのかぶりコンクリートの剥落防止を目的とした、
 繊維シート接着工の実験およびその分析を行い、適用性の検討を行った。

  検討結果をまとめると以下のようになる。

① 小型押抜き実験より、鉄筋コンクリートのかぶりコンクリートの剥落対策工として適用できるとされている
  150kgf以上の最大押抜き荷重がある仕様のものは、今回の試験ケースでは、次のケースが適用できる。

         No.3 ガラス四軸組布(190g/m2) + アクリル樹脂
         No.4 ガラス四軸組布(190g/m2) + アクリル樹脂
         No.5 ガラス四軸組布(190g/m2) + アクリル樹脂
         No.7 ガラス四軸組布(190g/m2) + 不飽和ポリエステル
         No.10 ビニロン三軸組布(34g/m2) + エポキシ樹脂
         No.11 ガラス四軸組布(190g/m2) + エポキシ樹脂
         No.12 ビニロン三軸組布(34g/m2) + エポキシ樹脂
         No.15 ガラス三軸組布(90g/m2) + アクリル樹脂
         No.16 ガラスクロス(230g/m2) + アクリル樹脂
         No.22 アラミド三軸組布(56g/m2) + アクリル樹脂
         No.23 ノンハロゲンメッシュシート(135g/m2) + アクリル樹脂
         No.25 ビニロン三軸組布(88g/m2) + アクリル樹脂
         No.27 アラミド四軸組布(115g/m2) + エポキシ樹脂

② より大きな耐荷重を期待する場合は、繊維シートの引張剛性を高めれば(例えば、目付量を多くする)最大荷重が増加する。
  しかし、繊維シートの引張強度や接着長さにより上限がある。③ 最大押抜き荷重は、FRPに用いる含浸樹脂の種類により差があり、
  次のような関係にある。
   エポキシ樹脂(1.00) > アクリル樹脂(0.86) > 不飽和ポリエステル樹脂(0.65)④ FRPの剥離には、繊維シートの引張剛性、
   含浸樹脂の付着強度、圧子の大きさ・形状が関係する。


FCP工法研究開発委員会 構成会員(50音順)
伊藤忠商事株式会社キョーワ株式会社株式会社東邦アーステック
日東紡績株式会社
日本ユピカ株式会社
前田工繊株式会社

目     次
1. はじめに 1
2. 小型押抜き試験 1
1. はじめに 1
3. 大型押抜き試験 12
4. 各ケースの適用性 15
5. 試設計 17
6. まとめ 19
7. おわりに 19

1. はじめに
   本報告書は、CONSEPT工法研究会FCP工法研究開発委員会(事務局 株式会社イズム内)の御依頼により、
  トンネル覆工落下防止対策工の試験検討業務をとりまとめたものである。
   本受託の目的は、種々のFRP(Fiber Reinforced Plastic)を用いた落下防止対策工の適用性の評価を行うことであり、
  実施項目を大別すると、以下の二点である。
      ① 小型押抜き実験結果をもとに各種の仕様の適用性評価
      ② 大型押抜き実験の実施および結果の考察

2.小型押抜き試験
   2.1 試験概要
     図1に示すように、日本道路公団 試験研究所 技術資料第121号の「6.2.2 FRP供試体押抜き試験」により試験が行われている。

図1 試験状況

2.2 試験ケース
     試験ケースを表1に示す1)
     各ケースそれぞれ3体の試験を行っているが、No.24は1体である。


表1 試験ケース


No. 繊維シート 目付け量

(g/m2)
含浸剤

(g/m2)
コンクリート プライマー 不陸修正 含浸樹脂 圧子
1 非補強、非樹脂塗布 普通 なし なし なし φ100
2 非補強、樹脂のみ塗布 600 普通 AR なし AR φ100
3 ガラス四軸組布 190 600 普通 なし なし AR φ100
4 ガラス四軸組布 190 600 普通 AR なし AR φ100
5 ガラス四軸組布 190 600 普通 なし AR AR φ100
6 ガラス四軸組布 190 600 普通 なし なし UP φ100
7 ガラス四軸組布 190 600 普通 ポリウレタン なし UP φ100
8 ガラス四軸組布 190 600 普通 なし UP UP φ100
9 ガラス四軸組布 190 600 普通 EP EP EP φ100
10 ビニロン三軸組布(M) 34 600 普通 EP EP EP φ100
11 ガラス四軸組布 190 600 普通 EP なし EP φ100
12 ビニロン三軸組布(M) 34 600 普通 EP なし EP φ100
13 ガラス四軸組布 190 600 表面劣化 なし なし AR φ100
14 ガラス四軸組布 190 600 表面劣化 AR なし AR φ100
15 ガラス三軸組布 90 600 普通 AR なし AR φ100
16 ガラスクロス 230 600 普通 AR なし AR φ100
17 ガラス四軸組布 190 600 普通 AR なし AR φ50
18 ガラス四軸組布 380 800 普通 AR なし AR φ100
19 ガラス四軸組布 750 1000 普通 AR なし AR φ100
20 ガラスクロス 230 600 普通 AR なし AR □100
21 ガラス四軸組布 190 600 普通 AR なし AR □100
22 アラミド三軸組布 56 600 普通 AR なし AR φ100
23 ノンハロゲンメッシュシート 135 600 普通 AR なし AR φ100
24 ビニロンループネット 150 3000 普通 AR なし AR φ100
25 ビニロン三軸組布(K) 88 600 普通 AR なし AR φ100
26 ビニロン三軸組布(K) 88 600 普通 ポリウレタン なし UP φ100
27 アラミド四軸組布 115 600 普通 EP EP EP φ100

※塗布量:プライマー=100g/m2、不陸修正材=500g/m2

※コンクリートの表面劣化:コンクリート表面を塩酸で劣化させ水洗する。

※AR:アクリル樹脂、UP:不飽和ポリエステル樹脂、EP:エポキシ樹脂

※接着面積:400mm×400mm

2.3 試験結果および考察

 最大荷重時の試験結果を表2に示す。

 表中の変位量、吸収エネルギー、剥離面積、剥離周長は、最大荷重発生時の値を記載してある。吸収エネルギーは、図2に示す荷重と変位の関係において斜線部の面積より算出した。この値が大きいと、より多くのエネルギー(荷重あるいは変位、またその両方)に耐えられる。

 No.13、No.14ケースは、コンクリート表面の劣化させた場合を模擬するため、塩酸処理を行ったが、表面のコンクリート分を取り除いただけで骨材は健全であったため、想定した状態にできなかった。

表2 最大荷重発生時の試験結果(3体の平均値)

No. 最大荷重

kgf
変位量

mm
吸収En

kgf・m
剥離面積

cm2
剥離周長

cm
破壊状況
1 98 0.179 モルタル破断
2 111 0.100 モルタル破断
3 265 19 1.773 922 112.7 FRP剥離
4 395 21 2.876 783 104.6 FRP破断又は剥離
5 392 16 2.285 505 85.5 FRP破断又は剥離
6 188 16 1.190 772 102.7 FRP剥離
7 297 21 3.274 868 100.0 FRP剥離
8 161 12 0.784 652 79.3 FRP剥離
9 462 7 1.005 154 49.9 FRP破断
10 195 4 0.307 75 39.4 FRP破断
11 458 9 1.416 161 49.0 FRP破断
12 207 4 0.328 125 34.0 FRP破断
13 357 10 1.382 223 57.2 FRP破断
14 332 7 0.982 158 51.6 FRP破断
15 198 7 0.581 132 49.8 FRP破断
16 290 12 1.328 523 84.5 FRP剥離
17 250 17 1.398 433 67.5 FRP破断
18 434 19 2.869 889 99.6 FRP剥離
19 434 14 2.299 809 93.8 FRP剥離
20 357 16 2.309 845 101.4 FRP剥離
21 358 12 1.755 430 77.2 FRP破断
22 295 17 1.765 509 77.4 FRP剥離
23 307 57 6.400 89.6 FRP破断又は剥離
24 123 6 0.319 72 FRP破断
25 169 17 1.081 317 69.4 FRP剥離
26 64 11 0.325 216 59.7 FRP剥離
27 661 20 4.501 503 78.2 FRP破断又は剥離

※:吸収エネルギーの略



図2 吸収エネルギー

図3に各ケースの平均最大荷重を示す。

 大部分の試験ケースは平均押抜き荷重が150〜500kgfにある。

 コンクリートの試験体は、圧子の周りに早強セメントモルタルを用いて5mmの厚さで固定しているが、その押抜き荷重は約100kgfである(No.1)。これに含浸樹脂(アクリル樹脂)を塗布すると押抜き荷重が約10kgf大きくなる。No.24、No.25については、押抜き荷重が150kgfに満たない。さらに、No.26は無対策(No.1)のケースより荷重が低い。

 図4に荷重と変位(3体の平均値)の関係を示す。

 試験機の載荷ストロークが限界に達して試験を中止したケース(No.23)を除けば、変位量は8〜21mmに分布している。

図3 各ケースの平均最大荷重

     

図4 荷重−変位(3体の平均値)

 ここでは、実験結果に対する全体的な傾向について記述する。

 図5に荷重と変位の関係の模式図を示す。

 最大押抜き荷重と変位量の関係については、二つの勾配が見られ、初期勾配の方が大きい。また、圧子の周りの早強モルタルが破壊するまでの勾配は初期勾配として表され、全てのケースでほぼ等しい。

 繊維の引張強度と弾性率については、引張剛性が大きいと荷重変位曲線の第2勾配も大きく、引張強度が大きいと押抜き荷重も大きくなる。

 剥離周長と荷重の関係については、ほぼ比例関係にある。

          

図5 荷重と変位の関係の模式図

次頁より、個別の試験結果に着目して整理していくこととする。


図6に目付量に着目した荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係を示す。

 この結果を整理すると、次のようになる。

・目付量が190g/m2より増えても、最大押抜き荷重は目付量に比例して大きくならない。

・90g/m2(ガラス三軸組布)〜190g/m2(ガラス四軸組布)の間に目付量と最大押抜き荷重の比例関係がありそうである。

・同程度の最大押抜き荷重であれば、目付量が多いと変位が小さい。



(a)最大押抜き荷重−最大変位量
(3体の平均値)


(b)荷重−吸収エネルギー
(各ケース1体)


(c)荷重−変位
(各ケース1体)


(d)荷重−剥離周長
(各ケース1体)


図6 目付量に着目した
荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係

 図7にアクリル樹脂の塗布パターンに着目した荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係を示す。

 この結果を整理すると、次のようになる。

・最大押抜き荷重は、プライマーか不陸修正材を用いた方が大きい。



(a)最大押抜き荷重−最大変位量
(3体の平均値)


(b)荷重−吸収エネルギー
(各ケース1体)


(c)荷重−変位
(各ケース1体)


(d)荷重−剥離周長
(各ケース1体)


図7 アクリル樹脂の塗布パターンに着目した
荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係


 図8に不飽和ポリエステルの塗布パターンに着目した荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係を示す。

 この結果を整理すると、次のようになる。

・最大押抜き荷重は、プライマーにポリウレタンを用いた場合が大きい。



(a)最大押抜き荷重−最大変位量
(3体の平均値)


(b)荷重−吸収エネルギー
(各ケース1体)


(c)荷重−変位
(各ケース1体)


(d)荷重−剥離周長
(各ケース1体)


図8 不飽和ポリエステルの塗布パターンに着目した
荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係

 図9にエポキシ樹脂の塗布パターンに着目した荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係を示す。

 この結果を整理すると、次のようになる。

・不陸修正材の有無による差は見られない。


(a)最大押抜き荷重−最大変位量
(3体の平均値)


(b)荷重−吸収エネルギー
(各ケース1体)


(c)荷重−変位
(各ケース1体)


(d)荷重−剥離周長
(各ケース1体)


図9 エポキシ樹脂の塗布パターンに着目した
荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係

 図10にプライマーと含浸樹脂に着目した荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係を示す。

 この結果を整理すると、次のようになる。

・最大押抜き荷重は、エポキシ樹脂>アクリル樹脂>ポリウレタン+不飽和ポリエステルの順に大きい。
・変位量は、エポキシ樹脂を用いると小さい。

・アクリル樹脂とポリウレタン+不飽和ポリエステルの第二勾配は概ね近い。



(a)最大押抜き荷重−最大変位量
(3体の平均値)


(b)荷重−吸収エネルギー
(各ケース1体)


(c)荷重−変位
(各ケース1体)


(d)荷重−剥離周長
(各ケース1体)

図10 プライマーと含浸樹脂に着目した
荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係


 図11に圧子の形状に着目した荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係を示す。

 この結果を整理すると、次のようになる。

・図の(d)のNo.4(φ100)とNo.21(φ50)は勾配がほぼ等しく、圧子が小さいとFRPの破断が起り易く(No.4(φ100)は1体、No.21(φ50)は3体が破断)、呉らの既往の結果と一致している。ゆえに、圧子の形状が小さいとその周辺のFRPに力が集中し破断しやすくなる。

・No.21(□100)は、No.4(φ100)に比べ隅角部でFRPの破断が起りやすい。



(a)最大押抜き荷重−最大変位量
(3体の平均値)


(b)荷重−吸収エネルギー
(各ケース1体)


(c)荷重−変位
(各ケース1体)


(d)荷重−剥離周長
(各ケース1体)

図11 圧子の形状に着目した
荷重・吸収エネルギー・変位・剥離周長の関係


3 大型押抜き試験

3.1 試験概要

 2.3m×2.3mのコンクリート平板供試体の下面にFRP接着工を設置し、中央の圧子から押抜き試験を行った(図12参照)。

 試験には、大型疲労試験機(最大荷重50tf、最大ストローク±200mm)を使用し、供試体に図13に示すような変位制御で載荷(0.5mm/0.5分)および観察(2分)を繰返した。このときの試験の終了要因は、FRPが破断した場合、FRPの剥離が端部まで進行した場合、試験機のストローク限界に達した場合のいずれかになった場合とした。また、剥離の進行の様子を捉えるために圧子の変位が2mm毎にFRPの剥離範囲を目視と打音で調べ、白ペイントで表示した。

 載荷荷重、変位、ひずみゲージの値は、載荷の直後で計測を行った。

 図14に試験に用いた供試体の概要図を示す。



図12 試験状況


図13 載荷パターン


図14 供試体概要


3.2 試験材料

 今回コンクリート供試体に施工したFRPの仕様を表3に示す。参考までに既往2)の大型平板と今回行った同じ仕様の小型平板も示す。


表3 FRPの仕様


繊維シート 目付け量

g/m2
弾性率

kgf/cm2
引張強度

kgf/cm2
プライマー 不陸修正 含浸樹脂 備考
ガラス四軸組布 190 7.4×105 3.5×104 EP EP EP
炭素繊維 200×2層 2.4×106 4.2×104 EP EP EP 既往の大型平板
ガラス四軸組布 190 7.4×105 3.5×104 EP EP EP 小型平板No.9

3.3 押抜き試験結果

(1) 荷重と変位

 図15に荷重と変位の関係を示す。

 結果を整理すると、次のようになる。

・今回の大型平板は、剥離が進行し始めた直後にFRPの破断により試験を終了した。

・既往の炭素繊維(200g/m2×2層)による結果と比較すれば、初期勾配とその時のピーク荷重は、ほぼ一致している。

・小型押抜き試験と比較すれば、載荷方法の違いによりFRPの仕様は同じ(ガラス四軸組布、エポキシ樹脂接着)でも、勾配等に関係は見られない。これは、載荷速度の違いによると考えられる。

・FRPが破断した近傍に付けているひずみゲージには、剥離がひずみゲージの位置まで進行しておらず、破断時に15μ程度しか発生していない。図16に既往の大型平板におけるFRPのひずみと変位の関係を示す。今回のひずみの結果は、図16のAの初期段階に当たる。



図15 荷重−変位


図16 ひずみ−変位の例


(2) 試験終了後の状況

 図17にFRPの破断が進行し始めている押抜き試験の状況を示す。図18は、試験終了後のFRP面の状況を示している。先に述べたひずみは図中に示すひずみゲージの値である。



図17 押抜き試験状況(圧子近傍)


図18 試験後の状況(FRP面)


4. 剥落対策工の適用性

(1) 押抜き荷重が150kgf以上あるものについて

 表4の網掛したケースは、押抜き荷重が150kgf以上あり、よく似た材料の組合わせを比較選別したものである。これらのケースは、鉄筋コンクリートのかぶりコンクリートの剥落対策工として適用できる。


表4 各ケースの適用性比較


No. 繊維シート 目付け量

(g/m2)
含浸剤

(g/m2)
プライマー 不陸修正 含浸樹脂 最大荷重

(kgf)
変位量

(mm)
備考
1 非補強、非樹脂塗布 なし なし なし 98 非補強ケース
2 非補強、樹脂のみ塗布 600 AR なし AR 111 非補強ケース
3 ガラス四軸組布 190 600 なし なし AR 265 19
4 ガラス四軸組布 190 600 AR なし AR 395 21
5 ガラス四軸組布 190 600 なし AR AR 392 18
6 ガラス四軸組布 190 600 なし なし UP 188 17 ※1
7 ガラス四軸組布 190 600 ポリウレタン なし UP 297 21
8 ガラス四軸組布 190 600 なし UP UP 161 13 ※2
9 ガラス四軸組布 190 600 EP EP EP 462 8 ※3
10 ビニロン三軸組布(M) 34 600 EP EP EP 195 9
11 ガラス四軸組布 190 600 EP なし EP 458 9
12 ビニロン三軸組布(M) 34 600 EP なし EP 207 14
13 ガラス四軸組布 190 600 なし なし AR 357 11 表面劣化ケース
14 ガラス四軸組布 190 600 AR なし AR 332 9 表面劣化ケース
15 ガラス三軸組布 90 600 AR なし AR 198 10
16 ガラスクロス 230 600 AR なし AR 290 15
17 ガラス四軸組布 190 600 AR なし AR 250 16 圧子比較ケース
18 ガラス四軸組布 380 800 AR なし AR 434 19 ※4
19 ガラス四軸組布 750 1000 AR なし AR 434 14 ※4
20 ガラスクロス 230 600 AR なし AR 357 16 圧子比較ケース
21 ガラス四軸組布 190 600 AR なし AR 358 13 圧子比較ケース
22 アラミド三軸組布 56 600 AR なし AR 295 17
23 ノンハロゲンメッシュシート 135 600 AR なし AR 307 58
24 ビニロンループネット 150 3000 AR なし AR 123 10 ※5
25 ビニロン三軸組布(K) 88 600 AR なし AR 169 21
26 ビニロン三軸組布(K) 88 600 ポリウレタン なし UP 64 15 ※6
27 アラミド四軸組布 115 600 EP EP EP 661 21

※1 プライマーにポリウレタンを用いたケース(No.7)の方が良好

※2 プライマーにポリウレタンを用いたケース(No.7)の方が良好

※3 不陸修正材を用いないケース(No.11)とほぼ同等

※4 No.4で同程度の荷重が出ている

※5 含浸材が多く必要

※6 押抜き荷重が150kgf未満


2) 目付量について

 「プライマー:アクリル樹脂、含浸樹脂:アクリル樹脂、繊維:ガラス四軸組布」の場合(No.4、No.17、No.18)、目付量が190g/m2より増えても最大押抜き荷重は目付量に比例して大きくならないので、このあたりが最適な目付量と考えられる。しかし、目付量が多い(380g/m2)と変位が小さく抑制できる。また、90g/m2(ガラス三軸組布)〜190g/m2(ガラス四軸組布)の間に目付量と最大押抜き荷重の最適な関係があると考えられるが、今回の試験結果だけでは定量的なことは言えない。

(3) 含浸樹脂について

 含浸樹脂について最大押抜き荷重を比較すると、以下のようになる(図10参照)。

エポキシ樹脂(1.00) > アクリル樹脂(0.86) > 不飽和ポリエステル樹脂(0.65)

注.( )内は、エポキシ樹脂を1.0とした場合の押抜き荷重の割合を示す


 エポキシ樹脂を用いると他の樹脂よりコンクリートとの接着力が期待できるので、高い引抜き荷重を期待できるが、その分FRPに力が集中し破断しやすくなるのでFRPの引張剛性(EI、EA)を増やす必要がある。

E :FRP(or繊維)の弾性係数

I : 〃   断面2次モーメント

A : 〃   断面積


 以下では、接着工における各接着剤ごとの組合わせについて述べる。

1) アクリル樹脂

 含浸樹脂にアクリル樹脂を用いる場合は、プライマーか不陸修正材のどちらかを用いればよい(図7参照)。

例 No.4(ガラス四軸組布)、No.5(ガラス四軸組布)

2) 不飽和ポリエステル樹脂

 含浸樹脂に不飽和ポリエステル樹脂を用いる場合は、プライマーにポリウレタンを用いればよい(図8参照)。

例 No.7(ガラス四軸組布)

3) エポキシ樹脂

 含浸樹脂にエポキシ樹脂を用いる場合は、プライマーを用いればよい(図9参照)。

例 No.11(ガラス四軸組布)、No.27(アラミド四軸組布)

(4) 押抜き荷重を期待する場合

 押抜き荷重を期待する場合は、エポキシ樹脂のような接着力を持つ樹脂を用いて、引張剛性の大きい繊維を用いればよい(図3参照)。

例 No.27(アラミド四軸組布)

(5) 吸収エネルギーを期待する場合

 吸収エネルギーを期待する場合は、①ノンハロゲンメッシュシートのように比較的柔らかい繊維シートを用いるか、②引張強度の高い破断しにくい繊維シートを用いればよい(表2参照)。

例 No.23(ノンハロゲンメッシュシート)

例 No.27(アラミド四軸組布)


(6) 変位抑制を期待する場合

 剥離による変位を抑制したい場合は、①含浸樹脂を多く塗布するか、②エポキシ樹脂のような接着力を持つ樹脂を用いればよい。しかし、①含浸樹脂の塗布量を多くするのはあまり現実的でないので、②の方がよい。(図3、図10参照)

例 No.10(ビニロン三軸組布)、No.12(ビニロン三軸組布)

5. 試設計

 ここでは、小型平板試験の結果から、アクリル樹脂を用いた場合の試設計を行う場合の考え方を示す。

 図19にアクリル樹脂を用いて2体以上が端部まで剥離したケースの最大押抜き荷重とEAの関係を示す(No.4は2体が端部まで剥離し、そのほかは3体が端部まで剥離)。下図より、最大押抜き荷重PとEAの関係は、回帰曲線で式1のように表される。

P=22.6×ln(EA)+98 -------------------------------------------------------------------- 式1

 ここに、

P :最大押抜き荷重(kgf)

E :繊維シートの引張弾性係数(kgf/mm2)

A :繊維シートの断面積(mm2)



図19 最大押抜き荷重と繊維シートのEAの関係


 ガラス四軸組布を用いた場合(No.4)の試設計の例を示す。

目付量 :190g/m2

引張弾性係数 :7,400kgf/mm2

比重 :2.54g/cm3

 ① 繊維シートの断面積A

  まず、繊維シートの設計厚さtを算出する。

t =目付量×繊維方向による低減係数÷比重

  繊維方向による低減係数は、図20より0.60とする。


三軸

四軸

図20 繊維方向による低減係数


t =190g/m2×10−6×0.60÷2.54

  =4.49×10−5m

  =0.0449mm

A =0.0449mm×400mm(繊維シートの接着幅)

  =17.96mm2

  ② 式1に当てはめる。


P =22.6×ln(EA)+98

  =22.6×ln(7,400kgf/mm2×17.96mm2)+98

  =365kgf   (実験値は395kgf)

 以上の流れに従えば、おおよその耐荷重を求められる。


6. まとめ

 トンネルの覆工コンクリートの剥落防止を目的とした、繊維シート接着工の実験およびその分析を行い、適用性の検討を行った。

 検討結果をまとめると以下のようになる。

①小型押抜き実験より、鉄筋コンクリートのかぶりコンクリートの剥落対策工として適用できるとされている150kgf以上の最大押抜き荷重がある仕様のものは、今回の試験ケースでは、次のケースが適用できる。

No.3 ガラス四軸組布(190g/m2) + アクリル樹脂

No.4 ガラス四軸組布(190g/m2) + アクリル樹脂

No.5 ガラス四軸組布(190g/m2) + アクリル樹脂

No.7 ガラス四軸組布(190g/m2) + 不飽和ポリエステル

No.10 ビニロン三軸組布(34g/m2) + エポキシ樹脂

No.11 ガラス四軸組布(190g/m2) + エポキシ樹脂

No.12 ビニロン三軸組布(34g/m2) + エポキシ樹脂

No.15 ガラス三軸組布(90g/m2) + アクリル樹脂

No.16 ガラスクロス(230g/m2) + アクリル樹脂

No.22 アラミド三軸組布(56g/m2) + アクリル樹脂

No.23 ノンハロゲンメッシュシート(135g/m2) + アクリル樹脂

No.25 ビニロン三軸組布(88g/m2) + アクリル樹脂

No.27 アラミド四軸組布(115g/m2) + エポキシ樹脂


②より大きな耐荷重を期待する場合は、繊維シートの引張剛性を高めれば(例えば、目付量を多くする)最大荷重が増加する。しかし、繊維シートの引張強度や接着長さにより上限がある。


③ 最大押抜き荷重は、FRPに用いる含浸樹脂の種類により差があり、次のような関係にある。

エポキシ樹脂(1.00) > アクリル樹脂(0.86) > 不飽和ポリエステル樹脂(0.65)

④ FRPの剥離には、繊維シートの引張剛性、含浸樹脂の付着強度、圧子の大きさ・形状が関係する。

7. おわりに

 CONSEPT工法研究会FCP工法研究開発委員会(事務局 株式会社イズム内)からの御依頼によりトンネル覆工落下防止対策工の試験検討業務についてとりまとめた。

 本報告書が、トンネル覆工の落下防止対策の向上につながれば幸いである。

 本報告書の取りまとめにあたり、京都大学朝倉助教授よりご指導を頂いた。また、FCP工法研究開発委員会の委員各位より種々のご助言、ご協力を頂いた。ここに記して謝意を表する。


参考文献

1)CONSEPT工法研究会:コンクリート落下防止に関する小型押し抜き試験結果、2000.9.1

2)呉智深、朝倉俊弘、吉澤弘之、遠鴻、小林朗、高橋徹:連続繊維シートの貼付によるコンクリート片の剥落防止効果に関する実験的・解析的研究、土木学会論文集、No.662、Ⅴ-49、2000

構造物技術研究部   部長 村田 修
トンネル研究室 研究室長 小西 真治
主任研究員 小島 芳之
研究員 六車 崇司
       
      Tel:042-573-7266





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